2021年03月11日

原告の陳述:東京外環道訴訟第10回口頭弁論(2021年3月2日)

 東京外環道訴訟の第10回口頭弁論と事業施行期間延長差止訴訟の第1回口頭弁論(併合)が、2021年3月2日東京地裁103号法廷で開かれました。
 今回は原告Tさんが、2021年10月に陥没事故を起こした事業者が同じ技術で「世界最大級の難工事」といわれる地中拡幅部の工事をすることへの不信感やその地中拡幅部の上で生活する恐怖を述べ、地上の住民の人命・人権を犠牲にしても構わないという事業は認められないと意見陳述を行いました。

 以下にその意見陳述をご紹介します。
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2021年3月2日
意見陳述
原告T

 よもや、公共事業のためには人命・人権の犠牲は付き物であると考えてはいませんか?
国及び東京都は、2021年3月31日迄のトンネル施行期間の延伸申請を承認・認可しないでください。トンネル事業は、既に、住宅下の陥没という最もあってはならない大失敗をし、その日より掘削工事を中断しているのです。大失敗をしたその事業者が、同じ技術をもって再びトンネル掘削工事をすることは、これ以上の犠牲を本気で防ぐつもりがあるならば、許されてはならないのです

 大深度地下使用認可条件違反として、国土交通大臣は大深度地下使用の認可と都市計画事業の承認を取り消し、また、都知事は都市計画事業の認可を取り消してください。調布市で大深度トンネル工事によって引き起こされた陥没・空洞・地盤の緩みは、大深度地下法により使用権が設定された範囲ではない浅深度において地盤に変容を引き起こし、また、事業者自らが約束せざるを得ない地盤改良工事もその浅深度においてなされる工事となります。

 私は、トンネル掘削工事が陥没事故によって中断していなければ、2020年12月頃に最初のトンネル掘削工事が通過する予定だった三鷹市に居住しています。私宅には半地下の浴場があり、気泡シールド工法による致死濃度の酸欠空気の流入をどう計測して命を守るのか、事業者の回答を待っている間に、今回の陥没事故を目の当たりにしました。恐怖と激しい憤りに駆られましたが、驚きはありませんでした。

シールドマシンの掘削土取り込み過ぎによる陥没の危険性については、本訴においてかねてより訴え、また、2020年6月の横浜のシールドマシン工事の陥没事故による分析において実感を強めてきたからです。私のような土木にも地学にも疎い者でも容易に理解できるシールドマシン工事における陥没の危険性は、当然ながら「予見可能性」があり、事業者及び事業の承認・認可をしている国・東京都は、工事を失敗し被害をもたらした加害者です。

 工事の失敗の原因及び再発防止策については、加害者である事業者による調査に基づき、「事業者が設置した事業者の下(した)の有識者委員会」(委員長弁)が検討し自己弁護をしているのです。この有識者委員会は、工事が失敗に至るまで事業者に助言を与えてきた東京外環トンネル施工等検討委員会の中の学者に2名の新たな学者を加えただけの委員で構成しています。未だ、第三者による公正な科学的検証は全くなされていません。

 この有識者委員会が2021年2月12日に出した再発防止策の基本方針は、そもそもシールドマシン工事を進めるにあたって必要な方針を改めて述べているにすぎません。事業者は、年度内に再発防止策を纏め、工事の再開を図っているようですが、それは、大失敗をした事業者が、これまでと同じ技術力で、再び大失敗をする危険性をはらんだままトンネル掘削工事を続けるということなのです。

 トンネル掘削工事がこれから進む先の地域には、加害事業者とその事業者のための有識者委員会でさえ認めざるを得ない、更なるボーリング調査が必須の地盤が5箇所あります。工事の失敗の要因は「想定外の特殊な地盤」にあるとしていますが、そうであれば、この先の工事予定地の地層は、これまでの地層に無い沢山の帯水層を含む「更なる危険をはらんだ全く想定のできない特殊な地盤」が次々と続くということになるのでしょう。

 2021年2月12日の記者ブリーフィングで、有識者委員会委員長は、地下は「1m先に何があるか分からない」と言い、分からないけれど、安全な工事に必要な200m毎のボーリング調査というのは「ものすごく費用が掛かる」ので、離れた地点のボーリング調査を結んでその間は同質な地盤と推測して工事を進めてきたというように答えました。「特殊な地盤と知ってはいたが、想定を上回る特殊な地盤だった」と苦しい言い訳をしていますが、それは、事前調査が不十分で、地盤を読み誤り、工事を失敗したということです。

全行程におけるボーリング本数の平均値など全く意味がないことがはっきりと証明されました。また、「トンネル直上のボーリング調査自体が地盤に影響を及ぼす可能性があって難しい」上に、安全な工事のために必要とされる調査費用さえも十分に掛けられないという工事計画なのであれば、そもそもこの大深度トンネル工事計画は安全性が担保されていません。シールドトンネル本体の施工のための費用は何度も大幅に増額してまで湯水のように使うが、トンネルの上に暮らす人々の安全を図るための費用は出せないということは、地上の住民の人命・人権を犠牲にしても構わないという事業なのではないですか。

私の家の下は、「世界最大級の難工事である直径30m(止水領域を含めると直径50m超)の巨大トンネル地中拡幅部が計画されています。これまでの計画によれば、まず、大深度トンネルが通り、次に地上へ通じる斜めのランプトンネルが入り、その後にそれを覆う巨大地中拡幅部トンネルを造るというのです。一番容易であったはずの大深度シールドトンネル工事でこんな失敗をしている事業者が、なんの実証実験もしていない世界最大級の難工事である地中拡幅部トンネル工事を安全に施工できるというのは、全くの幻想です。工事方法の細部は、工事を請け負ったそれぞれのJVの得意な技術によりアレンジを加えながら施工するというのですが、それは正に、地上の住民の人命・人権を掛けた極めて危険な実験です。

今回の陥没事故時に避難誘導等が遅れたのは(奇跡的に人命が奪われなかったことだけが唯一の救いですが)、事業者が考えてきた「緊急時」が、トンネル自体の崩壊の時であって、他の原因による地表面の陥没が含まれていなかったからです。それは、事業者が工事の危険性に敢えて目をつぶり、シールドトンネルの形成だけを考え、本質的に地上の住民の安全を重視していないからに他なりません。私はそのことが大変恐ろしく、事業者の説明会で何度も大きな声で問いただしてきましたが、「ご意見承ります」というお決まりの受け流ししか返ってきませんでした。陥没事故後2021年12月18日に、漸く、その「トンネル工事の安心安全の確保の取組み」は見直されましたが、「緊急時」の定義を、これまでのトンネル崩壊時の他に、「陥没や陥没につながる恐れのある空洞が発見された時も「緊急時」とする」という付け焼刃のものでした。

今後、トンネル掘削工事を再開して更なる被害を出せば、危険を知っていての行為ですから、それは未必の故意があると言わざるを得ません。陥没事故以前の昨年夏より、周辺住民からの騒音・振動・低周波音の苦情があったにも関わらず、原因の調査・究明をせず(苦情数は未だ公表せず)、そして、同時期にシールドマシンの回転の異常があったにも関わらず、工事を「なんとなく」(有識者委員会委員長弁)無理に進めた時点で、重大な業務上の過失はあった訳です。

現在既に、地盤を緩められてしまった被害者への補償交渉が始まっています。しかしながら、住民の希望に反し、加害者である事業者は、団体での交渉を拒否しています。何故、加害者にその選択肢が許されるのでしょうか。個人への補償額を個々に明らかにすることなど誰も求めていませんので、個人情報を盾にすることはできません。加害事業者が決めるという補償の基準を知らされなくては、個々の被害者が交渉を進めることはできません。また、わずか2、3か所の調査をもとに地盤の緩みは煙突状でトンネルの真上にしか起こらないというのは、非科学的です。いずれも、補償範囲を狭め、補償総額を抑えるための手段としか考えられません。この事態に及んで、国・東京都・事業者への不信感は増すばかりです。

裁判官の皆様、加害関係者の皆様、ご自身がこの恐ろしいトンネルの上で暮らすことを真摯に想像してみることはできませんか。私宅の地下は、3、4軒程先に今回事故が起きた南行き大深度トンネルが通り、2軒先にそれに並んで南行きランプシールドトンネルが通り、向かいの家の下に北行き大深度トンネルが通り、北行きランプシールドトンネルが反対側から近づき、そして最後にはその北行きトンネル2本を覆う世界最難関の工事である地中拡幅部トンネルが作られる予定になっています。安全を確保するために必要なトンネル間の1本分の間隔はもちろん全くありません。どのようにしたら、恐怖を感じる事無く日々の生活を営むことが出来るのでしょうか。

走り出した公共事業を止められないことが日本の慣習になっています。しかしながら、今、新型コロナとともに生きることになった世界中は、全ての現状を見直すことでこの難関を克服しようとしています。どうぞ、ここで、それぞれのお立場で、これまでの悪しき慣習を打ち破る英断をし、実行してください。            
以上


*****[お知らせ]*****
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nongaikan2017@gaikan.net まで


東京外環道の真実を伝える本を広めてください!
 「住宅の真下に巨大トンネルはいらない〜ドキュメント東京外環道の真実〜」
  丸山重威著 東京外環道訴訟を支える会編 本体1600円
  推薦:浜 矩子(同志社大学教授) あけび書房

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posted by 東京外環道訴訟を支える会 at 10:11| Comment(0) | 日記
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